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腟・外陰部の病気

まず知っておきたいこと

腟や外陰部は、女性の身体の中でも非常にデリケートな部位です。外部からの刺激や感染を受けやすく、年齢やライフステージにかかわらずさまざまなトラブルが起こる可能性があります。主な症状には、かゆみ、痛み、ただれ、おりものの異常、におい、できものなどがあり、その原因はホルモンバランスの変化、感染症、皮膚疾患、生活習慣の影響など多岐にわたります。

しかし、こうした症状は「よくあること」「年齢のせい」などと見過ごされがちです。腟や外陰部は“話しづらい・見えにくい”場所であるため、不調に気づいても受診をためらってしまう人も少なくありません。また、自己判断で市販薬を使用したり、インターネットの情報に頼ったりすると、症状が悪化したり、病気を見逃す可能性もあります。 とくに性感染症や悪性疾患(外陰がん・腟がんなど)は、初期にはほとんど自覚症状がない場合もあり、「なんとなくおかしい」「ちょっと変かも」と感じた時点での受診が非常に重要です。

婦人科では、視診や分泌物の検査などにより、見た目が似ていても原因の異なる疾患を正確に診断することが可能です。症状が軽いうちに治療を始めることで、再発を防ぎ、早期の回復が期待できます。

少しでも違和感を覚えたら、恥ずかしがらずに、まずは婦人科を受診してください。あなたの症状は、決して「我慢すべきこと」ではありません。

外陰部・腟にみられる主な症状

外陰部や腟に起こる不調は、日常生活の中で感じやすい体のサインです。しかし、場所が場所だけに「相談しづらい」「見えないから分からない」と我慢してしまう方も少なくありません。

こんなときは婦人科へ

以下のような症状がある場合は、早めに受診して下さい。

  • 強いかゆみや痛みがある
  • おりものが変な色・においになってきた
  • 外陰部にできものや腫れがある
  • 性交痛が続く
  • 原因のわからない出血がある

これらはすべて体からのサインです。「病気かもしれない」と不安を感じたときこそ、受診のタイミングです。婦人科では、問診・視診・おりもの検査などで正確に原因を突き止め、適切な治療を行います。

以下に、よく見られる症状を具体的にご紹介します。

かゆみ(外陰部のかゆみ・腟の奥のむずむず)

最も多く見られる症状の一つです。

  • 下着の中がムズムズする
  • 夜になるとかゆみが強くなる
  • 無意識に掻いてしまい、赤くなったり皮膚が切れる

原因は、カンジダなどの感染症、外陰炎、アレルギー、乾燥など様々です。かゆみが強い場合、生活に支障をきたすこともあるため、早めの受診が望まれます。

おりものの異常(色・量・においの変化)

通常のおりものは、透明~白色でにおいもほとんどありません。以下のような変化が見られる場合は注意が必要です。

  • 灰色で水っぽく、魚のようなにおいがする → 細菌性腟炎の可能性
  • ヨーグルト状でポロポロした白いおりものがでる → カンジダ腟炎の可能性
  • 黄緑色で泡立ち、強いにおいがある → トリコモナス感染の可能性
  • 血が混じる・ピンクがかったおりものが出る → がんやポリープなどの可能性も

においや色の変化、量の急増は、腟内環境の乱れや感染症のサインです。

外陰部の痛み・ヒリヒリ感・しみる感覚

  • 排尿の際にヒリヒリとしみる
  • 歩いたり、下着が当たると痛い
  • 長時間座っているのがつらい

こうした痛みは、皮膚のただれ、炎症、潰瘍、水ぶくれなどによって起こることがあります。 特に性器ヘルペスやバルトリン腺膿瘍では、強い痛みと発熱を伴うこともあるため、早めの診察が必要です。

外陰部のできもの・しこり

  • 下着に触れるとコリっとする
  • 赤く腫れて痛むしこりが急にできた
  • ぶつぶつとしたイボができている

こうした「できもの」には、粉瘤(皮膚の袋状の腫瘍)、バルトリン腺嚢胞、尖圭コンジローマ(性感染症)などが考えられます。 数日で自然に治ることもありますが、繰り返したり大きくなったりする場合は必ず婦人科を受診しましょう。

外陰部の変色や皮膚の異常

  • 皮膚が白く硬くなっている
  • 皮膚が薄くなってヒリヒリする
  • 慢性的にただれている

これらの症状は、萎縮性腟炎や外陰白斑症(萎縮性苔癬)などの疾患が疑われます。 治療せずに放置すると、がんのリスクが高まることもあるため、注意が必要です。

性交時の痛み(性交痛)

  • 腟の入り口で痛みを感じる
  • 挿入時に焼けるような痛みがある
  • 性交後に出血がある

性交痛は、腟の乾燥、萎縮性腟炎、腟炎、外陰部の皮膚炎などが原因になるほか、心理的な要因も関係する場合があります。恥ずかしがらずに相談することで、解決の糸口が見つかることも多い症状です。

出血(不正出血)

  • 性行為のあとに出血がある
  • 生理以外の日に少量の血が混じる
  • 閉経後なのに出血がある

腟や外陰部からの出血は、ポリープ・子宮頸がん・萎縮性腟炎など、幅広い原因が考えられます。特に閉経後の出血は放置せず、早めに検査を受けることが大切です。

腟・外陰部の病気に関するよくあるご質問(FAQ)

おりものの量やにおいが気になります。病気でしょうか?

おりものは体調やホルモンバランスによって変化しますが、急ににおいや色が変わった場合は、腟内の感染(細菌性腟炎、カンジダ腟炎など)が疑われます。悪臭がある、色が黄緑や灰色、泡立っている場合は受診をおすすめします。

外陰部がかゆくてたまりません。市販薬で様子を見ても大丈夫?

一時的に良くなることもありますが、自己判断での市販薬使用は症状を悪化させることがあります。かゆみの原因は真菌、細菌、乾燥、アレルギーなどさまざまなので、まずは婦人科で正確な診断を受けましょう。

下着に当たる場所にしこりがあります。これは何ですか?

バルトリン腺嚢胞や粉瘤(皮膚の袋状の腫れ)、性感染症によるできものなどが考えられます。大きくなったり、赤く腫れて痛むようであれば、膿瘍や炎症を起こしている可能性があるため、早めの受診が必要です。

性交のときに腟が痛いのですが、病気でしょうか?

痛みの原因は、腟の乾燥(特に閉経後)、感染、皮膚疾患、心理的な要因などさまざまです。放置せず、婦人科で相談することで、原因が分かり適切な対処ができます。

石けんで毎日しっかり洗っているのに、トラブルが多いのはなぜ?

洗いすぎや刺激の強い石けんは、腟や外陰部の粘膜を傷め、常在菌のバランスを崩してトラブルの原因になります。デリケートゾーンはやさしく洗うか、専用ソープを使用するようにしましょう。

パートナーから「いぼがある」と言われました。病院に行くべきですか?

尖圭コンジローマなどの性感染症の可能性があります。見た目に特徴的な場合もありますが、診断には医師の視診と検査が必要です。パートナーにも同時に検査・治療が必要なことがあります。

カンジダ腟炎は一度治っても、何度も再発します。なぜですか?

カンジダは常在菌の一種で、抗生物質の使用、ストレス、体調不良、ホルモン変動などで増殖しやすくなります。再発を繰り返す場合は、体質や生活習慣の見直しも必要です。慢性化する場合は、長期的な治療計画が必要です。

閉経後、おりものが減って腟が痛くなりました。これも病気ですか?

閉経後は女性ホルモンの減少によって腟が乾燥・萎縮しやすくなり、「萎縮性腟炎」を引き起こします。性交痛やかゆみ、出血の原因にもなるため、治療(エストロゲン外用薬など)によって症状を改善できます。

不正出血がありましたが、生理ではなさそうです。すぐに病院に行くべきですか?

不正出血の原因には、ポリープ、子宮頸がん、萎縮性腟炎など多くの可能性があります。特に閉経後の出血は要注意です。出血が少量でも、原因を特定するために婦人科を早めに受診しましょう。

婦人科の受診は恥ずかしいし、なんとなく怖いのですが…

初めての婦人科受診には不安があるかもしれませんが、医師は日常的に診察しており、プライバシーにも十分配慮しています。「こんなことで受診していいのかな?」という小さな悩みこそ、ぜひ相談してください。症状の早期発見・早期治療に繋がります。