TOPへ

性感染症(STI)

性感染症の検査と治療

性感染症(Sexually transmitted infections: STI)は、自覚症状がないまま進行することが多く、気づかないうちにパートナーへ感染を広げてしまう恐れがあります。適切な治療を受けずに放置すると、不妊症や子宮外妊娠、慢性的な骨盤内炎症、さらには神経障害など、将来的に深刻な合併症を引き起こす可能性もあります。このため、早期発見と早期治療は非常に重要です。自分自身の健康を守るだけでなく、大切なパートナーや将来の妊娠・出産を守ることにもつながります。

性感染症は、誰にでも起こりうる身近な病気です。症状がなくても感染している場合があるため、「もしかして…」と感じたときは、早めに検査を受けましょう。早期発見・早期治療、そしてパートナーと協力することが、あなたの健康と信頼関係を守る第一歩です。

費用のご案内

症状があり、STIを疑う場合は保険診療となります。 症状はないけれど、STIが心配でSTI検査を希望される場合は自由診療となります。

検査内容 費用
梅毒検査 2,200
クラミジア抗原検査(腟分泌物・PCR) 4,400
クラミジア・淋菌同時検査(腟分泌物・PCR) 6,600
クラミジア抗体検査(血液検査) 4,400
クラミジア検査(尿) 3,300
クラミジア検査(咽頭うがい液) 3,300
B型肝炎検査(血液) 2,200
C型肝炎検査(血液) 3,300
HIV(エイズ)抗体検査 3,300
トリコモナス・マイコプラズマ同時検査 7,700
性感染症検査(血液検査:梅毒検査、B型肝炎検査、C型肝炎検査、HIV検査、クラミジア抗体検査) 15,000

性感染症の主な種類と特徴

性感染症は、無症状でも感染していることがあるため、「症状がないから大丈夫」と自己判断せず、少しでも不安があれば、検査を受けることをおすすめします。

1. クラミジア感染症

クラミジア・トラコマティスという細菌によって起こる性感染症で、感染経路は腟性交、オーラルセックスです。日本では最も報告数の多い性感染症で、特に10代後半〜20代前半の若年女性での感染が目立ちます。感染に気づかず放置すると、子宮頸管から卵管、骨盤内に広がり、卵管炎や骨盤腹膜炎を引き起こして不妊や子宮外妊娠の原因になることがあります。また、妊娠中の感染では新生児結膜炎や肺炎のリスクがあるため、妊婦健診でのスクリーニング検査も重要です。

クラミジア感染症のよくある症状

  • おりものが増える
  • 下腹部がなんとなく重い
  • 性交時に痛みがある

※ほとんどの人が無症状のため、気づかず進行することもあります。

2. 淋菌感染症(淋病)

淋菌という細菌による性感染症で、感染経路は腟性交、オーラルセックスです。女性では子宮頸管から卵管・骨盤内に感染が広がり、骨盤内炎症性疾患(PID)や不妊症の原因となることがあります。

淋菌感染症のよくある症状

  • 黄色っぽいおりものやにおい
  • 排尿時の痛み(しみる)
  • 外陰部のかゆみや腫れ

3. ヒトパピローマウイルス(HPV)感染症

HPVは性行為によって感染するウイルスで、100種類以上の型が存在します。ハイリスク型は子宮頸がんの原因となり、低リスク型は尖圭コンジローマ(性器のいぼ)を引き起こします。感染しても多くは自然に排除されますが、持続感染するとがんのリスクが高まるため、定期的な子宮頸がん検診が重要です。また、コンドームでも完全に感染を防げないため、予防の基本はHPVワクチンの接種です。2022年よりワクチンの積極的勧奨が再開され、2026年3月末まではキャッチアップ接種として、過去に未接種または途中までの方も公費で接種できます。若年女性の接種率向上が期待される中、今後の発症予防効果が注目されています。

HPVのよくある症状

  • ほとんど症状なし
  • 一部の型でイボ(尖圭コンジローマ)ができることも

4. 性器ヘルペス

単純ヘルペスウイルス(HSV)1型または2型による感染症で、皮膚や粘膜の直接接触によって感染します。初感染では強い痛みを伴う水ぶくれや潰瘍、発熱、リンパ節の腫れなどの全身症状を伴うことがあり、生活に支障をきたす場合もあります。ウイルスは神経節に潜伏し、ストレスや疲労、月経などをきっかけに再発を繰り返します。現在は抗ウイルス薬による再発予防が可能で、治療の選択肢も広がっています。

性器ヘルペスのよくある症状

  • 性器やその周辺に痛みのある水ぶくれや潰瘍(ただれ)
  • 発熱やリンパの腫れ、強い痛みで歩けなくなることも

5. 梅毒

トレポネーマ・パリダムという細菌によって引き起こされる性感染症で、性行為や皮膚・粘膜の接触によって感染します。感染後はしこり(硬性下疳)ができ、第2期には手足の発疹(バラ疹)や脱毛が現れ、その後症状が消える潜伏期を経て、治療しなければ数年後に神経梅毒や心血管梅毒などの深刻な合併症に進行する可能性があります。日本国内では感染者数が2024年に14,000人を超えて過去最多を記録し、2025年も高水準で推移。特に若年女性の感染と先天梅毒の増加が社会的な問題となっています。早期検査・早期治療の徹底が求められています。

梅毒のよくある症状

  • 性器にしこりや潰瘍(痛くないことが多い)
  • 数週間後に、手足に赤い発疹や脱毛が起こることも

6. トリコモナス腟炎

腟トリコモナス原虫によって引き起こされる感染症で、主に性行為によって感染します。まれに、湿ったタオルや共用浴場などを介した間接的な感染が起こることも報告されています。女性では腟に感染して泡状のおりものやかゆみ、灼熱感を生じる一方で、男性はほとんどが無症状です。そのため、感染に気づかず女性にうつすケースが多く、治療にはパートナーの同時治療が必須です。

トリコモナス腟炎のよくある症状

  • 泡のようなおりもの、悪臭
  • 外陰部のかゆみやヒリヒリ感
  • 排尿痛、性交痛

7. カンジダ腟炎

カンジダという真菌(カビの一種)が、免疫力の低下や抗生物質の使用、ホルモンバランスの乱れなどを契機に増殖して発症する腟炎です。性交渉が直接の原因ではないことも多く、疲労や妊娠、糖尿病などの体調変化による自己由来の発症が大半を占めます。強いかゆみやヨーグルト状のおりものが特徴で、再発を繰り返すこともあります。再発性カンジダ症では長期的な治療管理が必要になる場合があり、婦人科での継続的なフォローが推奨されます。

カンジダ腟炎のよくある症状

  • 白くポロポロしたおりもの(ヨーグルト状)
  • 強いかゆみ、ヒリヒリ感
  • 外陰部の赤みや腫れ

性感染症のよくあるご質問(FAQ)

症状がなくても性感染症にかかっていることはありますか?

はい、あります。性感染症の多くは、特に女性では自覚症状が出にくいまま進行することが多く、気づかないうちにパートナーにうつしてしまったり、不妊症や流産などの原因になることもあります。

性感染症の検査はどんな方法で行いますか?

検査方法は感染症の種類によって異なります。

血液検査や、腟や子宮頸部の分泌物、うがい液、綿棒で採取した検体などを使って診断します。

結果が出るまでどれくらいかかりますか?

早いもので当日~翌日、一般的には7日程度で結果が判明します。

性感染症と診断された場合、どんな治療をしますか?

感染症の種類によって治療法が異なりますが、細菌感染(クラミジア、淋菌、梅毒など)には抗菌薬、ウイルス感染(性器ヘルペス、HIVなど)には抗ウイルス薬が使用されます。薬は内服や注射などの形で処方されます。治療期間は数日〜数週間とさまざまで、医師の指示に従ってしっかり服用・通院することが大切です。

性感染症は治りますか?

細菌性の性感染症(クラミジア・淋菌・梅毒など)は、早期に治療すれば完治が可能です。ただし、性器ヘルペスやHIVなどのウイルス感染症は、完治ではなく“抑える治療”になります。症状を和らげたり、再発や感染のリスクを減らすために、継続的な服薬や通院が必要になることもあります。

パートナーも一緒に治療する必要がありますか?

はい、必要です。自分だけが治療しても、パートナーが未治療のままだと再感染のリスクが高まります。一緒に検査を受けて、必要があれば同時に治療を受けることで、再感染や他者への感染拡大を防ぐことができます。恥ずかしいと思わずに、お互いの健康のために協力し合うことが大切です。

性感染症にかかると妊娠や出産に影響しますか?

はい、性感染症は妊娠や出産に影響を及ぼすことがあります。例えば、クラミジアや淋菌に感染していると、卵管の炎症や閉塞が原因で不妊になることがありますし、妊娠中の感染は流産・早産・胎児への感染リスクを高めます。妊娠を希望している方や、妊娠が判明した場合は、早めに性感染症の検査を受けておくことが安心です。

保険は使えますか?

医師が必要と判断した検査・治療は、健康保険の適用対象となります。たとえば、明らかな症状がある場合や、妊婦健診におけるクラミジア検査などが該当します。一方で、自由診療でのスクリーニング検査や、希望による検査は保険適用外となり、自己負担となります。詳しくは医師にお尋ねください。

郵送検査キットは信頼できますか?

厚生労働省の基準を満たした民間の検査機関であれば、一定の精度と信頼性はあります。ただし、検体の採取方法や検査体制には差があるため、正確な診断や治療のためには、陽性だった場合は必ず医療機関で再検査を受けることが必要です。匿名性が高い点や手軽さは魅力ですが、あくまで補助的な手段として考えるのがよいでしょう。

性感染症を防ぐにはどうしたらいいですか?

最も基本的な予防策は、コンドームを正しく使用することです。ただし、HPVや性器ヘルペスなどは皮膚接触でも感染するため、完全な予防は難しいのが実情です。予防のためには、信頼できるパートナーとの関係を築くこと、定期的な検査、HPVワクチンの接種(女性・男性とも)なども有効です。万が一感染した場合でも、早期発見・早期治療を徹底すれば重症化を防ぐことができます。

検査キットで陽性だった場合、治療してもらえますか?

はい、なるべく早めに受診してください。
近年では、自己採取可能な検査キットや郵送検査サービスが広まり、自宅で匿名・簡単に検査を受けられるようになってきました。医療機関に行くことに抵抗がある方や、忙しくて受診の時間が取れない方でも、気軽に検査にアクセスできる環境が整っています。こうした検査方法は、若年層や無症状の方にとっても、早期発見の大きな手助けとなります。検査キットで陽性となった場合は、当院で治療できます。速やかに受診しましょう。