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人工妊娠中絶|手術の流れ・費用・術後のケア

人工妊娠中絶とは?|手術の対象・法律上の条件

人工妊娠中絶とは、妊娠の継続が困難または望ましくないと判断された場合に、医学的手段を用いて妊娠を中断する処置です。身体的・精神的・社会的な理由により、母体の健康を守る目的で行われる重要な医療行為です。

日本では、刑法により原則として中絶は禁止されていますが、「母体保護法」に基づき、一定の条件下で医師が中絶を行うことが認められています。この法律は、女性の身体的・精神的な健康を守るために制定されており、以下のような場合に中絶が許可されます。

中絶が認められる法的条件

  • 経済的・身体的理由により、妊娠・出産が母体の健康を著しく損なうおそれがある場合
  • 強姦などの犯罪により妊娠した場合
  • 暴行もしくは脅迫によって、または抵抗もしくは拒絶することができない状況で妊娠した場合

なお、中絶手術には、原則として妊婦本人と配偶者(パートナー)の同意が必要です。

妊娠の初期症状に気づいたら|検査と診断のポイント

妊娠に気づく最初のきっかけは、「いつもと違う身体のサイン」によることが多くあります。気になる症状がある場合は、早めに妊娠検査薬を使い、必要に応じて産婦人科を受診しましょう。

主な初期症状

  • 月経の遅れ:月経(生理)予定日を1週間以上過ぎても出血がない場合は、妊娠の可能性を考えましょう。
  • 基礎体温の変化:高温期が3週間以上続いている場合、妊娠の可能性が高いとされます。
  • つわりの症状:吐き気、食べ物の好みの変化、臭いに敏感になるなど、個人差はありますが妊娠特有の変化が現れます。
  • 乳房の変化:張りやすくなったり、乳首が黒ずんで敏感になることがあります。
  • 体の不調:眠気やだるさ、イライラしやすくなる、便秘や頻尿などもホルモンの影響で起こりやすくなります。

妊娠の確認方法

  • 妊娠検査薬:市販の検査薬は高感度で信頼性も高くなっていますが、使用時期により正確性が異なるため、複数回の確認や医療機関の受診が推奨されます。
  • 病院での確認:尿検査や超音波検査で妊娠を確認し、子宮内妊娠かどうかや週数を診断します。

中絶できる時期と方法

初期と中期でどう違う?

人工妊娠中絶は妊娠週数によって「初期中絶」と「中期中絶」に分類され、それぞれ方法や身体への負担が異なります。

初期中絶(妊娠11週6日まで)

  • この時期の中絶は「吸引法」または「掻爬法」によって行われ、麻酔下で子宮内容物を除去します。
  • 一般的に日帰りで可能な処置であり、術後の回復も比較的早いとされています。
  • 術後の痛みや出血には個人差があるため、術後数日は安静に過ごすことが大切です。

中期中絶(妊娠12週0日〜21週6日)

  • 妊娠12週を超えると、胎児の成長に伴い、中絶方法は人工的な分娩を行う形に変わります。
  • 身体的・精神的な負担が大きくなるため、入院が必要です。当院では実施できないため、実施可能な施設に紹介します。

妊娠22週以降は中絶不可

  • 妊娠22週を過ぎると、胎児は母体外で生存できる可能性があるとされ、日本の法律ではこの時期以降の中絶は認められていません。

中絶手術の流れ|予約から術後フォローまで

中絶手術を受ける際は、手術の手順や必要な準備を正しく理解しておくことが大切です。

手術の基本的な流れ

1初診・妊娠確認

  • 問診、尿検査、超音波検査により妊娠の有無と週数を確認します。
  • 医師と相談し、本人の意思と状況を確認します。

2術前検査・同意書の提出

  • 血液検査、感染症検査などを実施。
  • 本人および配偶者(パートナー)の同意書を提出します(未婚や事情によっては医師の判断で対応します)。

3手術当日

  • 静脈麻酔を使用し、吸引法で手術を実施します。
  • 手術は10〜20分ほどで終了します。
  • 数時間院内で安静に過ごした後、問題がなければ当日中に帰宅できます。

4術後診察(1週間前後)

  • 子宮の収縮状態や出血の有無を確認します。
  • 次回の月経予定や避妊指導についても相談させていただきます。

術後の過ごし方と注意点|身体と心のケア

中絶手術後の数日〜1週間は、心身ともに大きな変化を感じやすい時期です。以下のようなケアが大切になります。

  • 安静:術後1週間は激しい運動や重労働を避け、無理のない生活を心がけてください。
  • 入浴・性行為:出血が完全に止まるまで入浴や性行為は避けることが推奨されます。
  • 排卵と月経:通常、術後約2週間で排卵が始まり、4〜6週間で月経が再開します。
  • 心のケア:中絶を経験したことで不安や喪失感を抱える方も少なくありません。医師や都度スタッフにぜひご相談下さい。

手術費用と必要な書類

中絶は保険適用外

人工中絶手術は自由診療となります。当院の費用の目安は以下の通りです。

項目 金額(税込・目安)
術前検査料 約10,000円
手術料 約120,000円
麻酔料 約20,000円

※ 術後避妊指導や薬代などが、別途加算されることがあります。

必要な書類
  • 本人確認書類(健康保険証、運転免許証など)
  • 本人およびパートナーの同意書
  • 未成年者の場合は保護者の同意書(原則)

将来の妊娠への影響はある?

人工中絶手術にむけた正しい知識と予防策

適切に行われた人工妊娠中絶手術であれば、将来の妊娠や出産に対して重大な影響を与えることは少ないとされています。

ただし、術後に子宮内感染や癒着などが起こると、妊娠しにくくなったり、不妊や流産のリスクが高まったりする可能性もあります。そのため、術後の経過観察や必要な診察をきちんと受けることが重要です。

また、望まない妊娠を防ぐためにも、自分に合った避妊方法を医師と相談しながら見つけていくことが大切です。将来的に安心して妊娠・出産できるよう、今できることから始めましょう。

まとめ|中絶を考えるときに大切なこと

中絶という選択は、身体だけでなく心にも大きな影響を及ぼす可能性があります。自分の人生や将来にとって、最善の選択をするために、以下の点を意識してください。

  • パートナーとしっかり話し合い、お互いが納得できる決断を目指しましょう。
  • 一人で抱え込まず、信頼できる家族や友人、当院のスタッフに相談して下さい。
  • 経済面・生活面・精神面など、さまざまな角度から自分の状況を見つめ直しましょう。
  • 中絶後の将来設計や避妊方法についても、一緒に考えていきましょう。

どのような決断をしても、あなたの価値が変わることはありません。一人で悩まず、支援を受けながら前向きに歩んでいきましょう。

人工妊娠中絶手術に関するよくある質問(FAQ)

中絶は妊娠の何週目まで可能ですか?

日本の法律では、妊娠21週6日までに限り人工妊娠中絶が認められています(母体保護法による)。 妊娠12週未満であれば「初期中絶」として人工妊娠中絶が可能ですが、12週を過ぎると「中期中絶」となり、分娩に近い方法が必要になります。 さらに22週以降は中絶できませんので、妊娠の可能性がある場合は早めに医療機関を受診してください。

手術は痛いですか?麻酔は使われますか?

当院では静脈麻酔を用いて行います。静脈麻酔では眠っている間に手術が終了するため、手術中の痛みはほとんどありません。 術後は、月経(生理)痛のような下腹部の鈍痛や軽い出血が数日間続くことがありますが、処方された鎮痛薬などでコントロール可能です。

中絶後、妊娠や出産ができなくなることはありますか?

適切な施設で安全に手術を受けた場合、将来的に妊娠・出産できなくなるということはほとんどありません。 ただし、感染症や子宮の損傷などが生じた場合には、子宮内膜の癒着や不妊の原因となることもあるため、術後の体調管理や再診が非常に大切です。 将来の妊娠を望む方は、術後のケアと定期的な婦人科受診をおすすめします。

手術費用はどれくらいかかりますか?保険は使えますか?

中絶は保険適用外の自由診療となり、自己負担が必要です。 ただし、支援給付を受けられる場合があります。目安として、初診・手術・術後診察を合わせて10万円~15万円程度が一般的です。妊娠週数や医療機関、使用する麻酔・薬剤の種類によって金額に幅があります。 費用の詳細は事前にクリニックへ確認し、支払い方法(カード、分割払いなど)も合わせて確認しておくと安心です。

中絶後、月経はいつ再開しますか?排卵はどうなりますか?

一般的には、手術から4〜6週間程度で月経(生理)が再開します。ただし、排卵はそれよりも早く手術後2週間前後で起こる場合もあります。 そのため、術後すぐに避妊を始めないと、予期せぬ再妊娠のリスクがあるため注意が必要です。月経(生理)が2ヶ月以上こない場合や不正出血が続く場合は、早めに医師に相談してください。

パートナーの同意は必ず必要ですか?

原則として、配偶者やパートナーの同意が求められます(母体保護法の規定による)。 しかし、DVや家族関係に問題がある場合など、例外的に本人のみの意思で対応できるケースもあります。一人で悩まず、医師に事情を相談してください。守秘義務があるため、プライバシーは厳守されます。

未成年ですが、中絶を受けることはできますか?

未成年の方でも中絶手術を受けることは可能ですが、原則保護者の同意が必要となります。まずはご相談下さい。 ただし、家庭環境や事情により同意を得られない場合でも、まずは医療機関に相談してください。最近では、若年女性のための相談窓口や公的支援制度も整ってきています。

中絶後、どのような避妊を始めるべきですか?

術後すぐに排卵が再開する可能性があるため、手術後すぐに避妊を始める必要があります。 避妊方法は、低用量ピル、子宮内避妊具(IUD)、コンドームなどがありますが、体調やライフスタイルに合ったものを相談して決めましょう。再び望まない妊娠を防ぐためにも、避妊の継続は重要です。